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━第11回━
ささやかながら、10代の頃に夢見てた事は、20代の内に叶ったんです。 今は、夢の向こうの未知の領域って感じかな。
━日本語の先生になろうと思ったのはいつ頃ですか?━
もともと、イギリスが大好きで、大学ではイギリス文学を勉強していました。 大学時代に一年程、イギリスへの留学も経験しました。
その当時は、世界的に日本語学習ブームが起こっていて、留学先の大学でも、丁度日本語クラスが開設され始めたんです。 その頃からですね、日本語教師というものを意識し始めたのは。
━イギリスから何故アメリカへ?━
ほんとは、留学後、またイギリスに戻って勉強を続けるつもりでした。 その想いを抱きながら、日本に戻ってからも大学院で英文学の勉強に励んでいたんです。
その一方で、教師になる為の勉強もして、 日本語教育能力検定試験にパスしました。
試験合格と同時期に、たまたま父の知り合いを通じて、 アメリカ、ジョージア州の短大で日本語コースを新設するので、 講師を探しているという話を聞き、面接に応募しました。
東京での一次面接とジョージアでの最終面接にパスして、日本語教師のお仕事を頂きました。それが、渡米のきっかけですね。
━ジョージアでは念願の日本語の先生に?━
大学院修了と同時にクオーター制の最後の学期に間に合うように 渡米しましたが、面接から渡米までの間に、 私を雇った進歩的な学長がクーデターにあって、新学長に代わっていたんです。
その新学長は保守的な方で、日本語のクラスにはあまり興味が無く、経営的にも財政難で、次年度のコントラクトが出ない状況になったんです。
新たな職場を探している時に、教育学会誌で見つけたのがCCSNの募集でした。それから、アリゾナで学生に戻っていた時期を除いて約13年ほどここでお仕事をさせて貰ってます。
結局、ジョージアでは一学期間だけの先生でしたね。(笑)
━言語上達のポイントは?━
近道は無いと思う、何事でも地道な努力は必要だし。 ただ、よく、その国に行けばすぐ出来る様になるとか言うでしょ。 勿論、リスニングや運用能力は上達すると思うけど、
行く前に基本的な部分の勉強は必要になってきます。
経験から学ぶ部分もあるけど、ロジックが分かっていれば、 飲み込みも早いです。例えば、文法の勉強などを留学前にしっかりとやっておくのは上達の近道かもしれない。
私自身、決して語学の才能がある訳じゃなく、ただ好きなだけ。 それと、記憶力には自信があって、それのみでここまでやってきましたね。(笑)
━日本語英語について━
アメリカ生活の長い人は英語交じりの日本語を喋るでしょ。 昔、日本に居た頃は、「あんな人にはなりたくない!!」とか思ってたけど、
気が付けば、自分がそうなってる。(笑) 日本に帰った時は、極力使わない様に心がけてるけど、 こっちで日本人の友達と話してる時は、自然に使ってるし、
その方がしっくりくるの。
物を落とした時とか、「Oops」って言ってる日本人の教授とかを見た時は、「えっー」とか「ひけらかしてるのかい」 なんて思ってたけど、今では、自然と出ちゃう。(笑)
あと、日本語を話している時でも、 イントネーションが英語になってる時があるみたい。 お互いに影響しあうみたいですね。
━美しい日本語とは?━
日本語の先生としていけない事かもしれないけど、 「美しい日本語を守る」といった気負いは無いですね。 というのも、言語っていうのは、変わって行く運命にあると思うの。
古典とかみても、意味が変わるし、使い方も変わる。 無くなった言葉もあるでしょ。
綺麗な日本語って事で言えば、 「すごい」って言葉も良くないということになります。 「すごい」はもともとは英語のテリフィック(壮絶)と同じで、
ひどくてこわいという意味が並外れて良いことの強調に使われるようになったんですけど、 そういった変化はおこって当然なんですよ。
あと、語尾をはっきり発音しない人が増えてるらしいけど、 それは、美しくないと思いますね。 やっぱり、口をしっかり空けて、発音をキッチリするのが綺麗な言葉の基本かな。
日本語は特に、「ん」以外は母音が必ずはいるので 音が響く筈なんです。もちろん例外もありますが、 母音が入ってるものは飛ばさずにキチンと発音する事は、
綺麗に聞こえるポイントだと思いますよ。
あと、へんなカタカナ英語は抵抗がありますね。 例えば、「ゲットする」とかの類です。 でも、実はあれも語形成のルールに則ってるんですけどね。(笑)
━語形成のルールってなんですか?━
基本的に外来語は日本に入ると全て名詞になるんです。 だから、「ゲット」も名詞になるから「する」って語尾につける必要があるんです。
「エンジョイする」とかもそうですよね。 あと、ゴージャスとかはもともと形容詞だけど、 日本にはいると、形容動詞になるんです。 形容動詞は形式上、名詞に近くて、ゴージャスなホテルというふうに、「な」になるんです。
ゴージャスのホテルって言わないですよね。 形容詞は形容動詞になる。 ちゃんと、単語を形成する場合のルールがあるんですよ。(笑)
少し話が、それちゃいましたけど、きっちり発音するのが 綺麗に聞こえる日本語のポイントだと思います。
━どういった学生さんがいますか?━
ラスベガスという土地柄、仕事の為に日本語を 勉強したい学生が多いのかと思ってました。 でも、昔から割と、日本の文化に興味を持ってる人が多いですね。
今は、圧倒的にアニメファンが多いです。(笑)
習字に興味があるとか、趣味から入る人達は長続きもします。 逆に、仕事に必要で日本語をとってる人は、なかなか続かない。 やっぱり、仕事で使えるまでには、時間もかかるし、
がっかりして途中で止めちゃう人が多いのは残念です。
学生達のレベルはまちまちで、 高校時代にすこし日本語をかじってる人もいるし、 「あいうえお」も読めない学生もいます。 「あいうえお」からはじめた学生が、一学期間終わって、
簡単な会話ができるようになっている。 「あー先生やっててよかった」と思える瞬間ですね。
━クラスでこれだけは学生に伝えたい事などが あれば教えて下さい。━
教える上で、日本語特有の難しさはあると思うけど、
日本語、英語に限らず、伝えたい事が伝えられる 喜びをみんなに味わってもらいたい。 たとえ片言でも相手の言葉で話すと気持ちが通じる所があったりしますよね。
日本語で日本人と話が出来ると楽しいし、その感動を味わって貰いたいです。 もともと私をこの世界に引き込んだ原点もそこにあるんです。
私、結構シャイなんです。 週の間沢山の人と会うでしょ。 だから、休日はその反動で引きこもるんです。(笑) 家でネコと和んだり、庭でガーデニングしたりしてます。
土をいじってると、気晴らしにもなるし、頭が真っ白になって リセットできる感じがして好き。 昔は土いじりとか嫌いだったんですけど、今はハマッテマス。
「先祖はお百姓さんだった」なんて勝手に思い込んでます。(笑) あと、ショッピングとたまーのドライブですかね。
夕暮れ前にレイクミードに向かって車を走らせるんです。 そうすると、ボールダーシティーの手前で、右側の谷間に開けてくる景色が視界に飛び込んでくるんですが、この世の物とは思えない位、綺麗です。
夕暮れ時になるように時間を図っていくんですけど、 砂漠の夕焼けは山が赤紫色に光ってて、ちょっと、桃源郷っぽいですよ。
昔から、野心とかがあったわけでは無いんです。 ささやかながら、10代の頃に夢見てた事は、20代の内に叶ったんです。 今は、夢の向こうの未知の領域って感じかな。
仕事に関する目標は、より良い異文化間のコミュニケーションを 助けるお手伝いが出来れば、と思ってます。 これからも、日本語教育に限らず、それに携わるお仕事を続けていければいいですね。かっこつけすぎたかな。(笑)
でもね、異文化間のコミュニケーションって想像以上に大変。 今でも結構、めげる事があったりするんですよ。 コミュニケーションの手段は言葉が全て、という訳じゃないけど、
言語というのは、相互理解に役に立つ、非常に大切な手段だと思うんです。 限りのある言葉ですが、それを最大限に使っていけるよう、心がけていきます。
●取材後●
「ことば」を大切にする唐澤先生。インタビュー中もその大切な「ことば」を、ひとつひとつ丁寧に選びながらお話されているのを実感しました。
表現力豊かな唐澤ワールドに終始引き込まれる編集部員。授業中には決して見せない、お茶目な一面もしっかり覗かせて頂き、大変得した気分でインタビューを後にしました。
先生、今後ともよろしくお願いしますね。
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